記録帳

クラウド、データ分析、ウイスキーなど。

SPRINT 最速仕事術

 

SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法

SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法

 

 上記の本を読んだので、メモとして記載。

 

■概要

GoogleVentures社が実施しているSPRINTというプロセスを具体的に説明した本。SPRINTとは、1週間(5日間)で

・大きな課題に対して

・ソリューションを考え

・プロトタイプを作成し

・テストして答えを出す

手法である。
具体的には、7人ほどのチーム(決定権をもつ、決定権者を1人必ず加える)で以下のようなプロセスを実施する。

月曜:目標を固める
まずは取り組むべき大きな目標を決める。(「新規顧客に良いコーヒーをオンラインで届ける」等)
その後、ターゲット顧客の行動パターンをワークフローとして描き、その中から「誰の」「どのタイミング」に狙いを定めるかを決定する。
月曜日の時点で、「目標」と、それを達成するために一番重要なのは「誰が」「何をした瞬間」なのかが決まっている。

 

火曜:思考を発散させる
月曜日に決めた瞬間をより良いものにするために、各自でアイデアを出しまくる。その際は、全く別の業界の素晴らしいアイデアからインスピレーションを得る。
イデアを出したら、それをスケッチする。(スケッチしたものを一気にたくさん見るのが、短期記憶の観点で重要とのこと)
火曜日の時点で、アイデアがたくさん出ている。

 

水曜:ベストを決める
火曜日に出したアイデアを、1つに決める。
SPRINTでの基本的な決め方は、話し合いでの会議ではなく、投票+決定権者の選択だ。たくさんのアイデアを見たら、各自で投票をする。その後、決定権者がアイデアを決定する。この時、投票の数は参考にするだけなのがポイント。
水曜の時点で、プロトタイプとして作るべきアイデアが決まっている。

 

木曜:幻想を作る
プロトタイプを作る。
WEBサイトやアプリは、実物を作るのではなくキーノート(やパワポ)で「それっぽい」ものを作るまでに留める。面白い者だと、チャットボットのプロトタイプを作るのに、プログラミングしていると時間がないため、本物の人がチャットボットのように振舞って返信したSPRINTもあったらしい。
木曜日の時点で、動く(と顧客は信じる)プロトタイプができている。

 

金曜:テストをする
5人のテスターを使ってテストをする。
この5人のテスターは、SPRINT中に選定しておく。実際にサービスを使う可能性のある人を、広告やツテを利用して選ぶ。
テストは、小さい部屋でテスターとインタビュアーの一対一で行う。
他のSPRINTチームメンバは、別部屋で待機する。この小さい部屋でのインタビューの様子は、ビデオでリアルタイム撮影されており、別部屋に繋がっている。インタビュー中は、別部屋でビデオで見ているメンバがメモを取る。
金曜日の時点で、作成したソリューションについての生の反応が見れる。

■感想

人間の脳のこと考えすぎ、理屈に基づきすぎ、具体的すぎ。
さすがgoogle式だと感じた。

 

人間の脳のこと考えすぎ、について。
このプロセスの根底には、「他の作業に気を取られず同じ作業を集中して行う」というルールがある。書籍内でも書いてあるが、人間の脳は1つのことに集中している時が一番生産性が良い。
また、目標やアイデアをホワイトボードに書き出しておいて、いつでも振り返られるようにしておくことが多い。これは、人間の短期記憶から外れた重要事項を、また活性化させ短期記憶メモリに復元させるためだ。これをすることで、色々な事項が繋がって良いアイデアが生まれる。
このように、人間の脳の仕組みに基づいてプロセスを考えている。

理屈に基づきすぎ、について。
ブレインストーミングよりも個人で考えた方が良い成果が出る、6人以上にテストをしても5人にテストをした時とだいたい同じ結果になる、等学術的に明らかになっていることを前提にプロセスを組んでいる。(論文のリンクまで貼ってある)
人間の脳のこと考えすぎ、に通じたところがあるが、プロセスの理由がここまで明確だと、「確かにやればできるかも・・・」という気になってくる。

具体的すぎ、について。
プロセスの紹介が、その日の何時に何をやるレベルまで載っている。ここまで具体的なプロセス紹介の書籍は初めて見た。また、使う道具も「黒と青のマーカー」「15mmサイズのドットシール(ピンク)」等細かい。この本が台本の劇をすぐにでもできる。

 

ただ、実際にこれをフルでやるのはすぐには大変だ。
7人の予定を5日間確保する(部長レベルの人間を含め)ことや、外部からテスターを確保すること、SPRINT中は全員が同じ部屋で他デバイスを触るの禁止、他の仕事禁止、等。。。
ただ、アイデアの出し方や決定の仕方は普段の仕事に使えると感じた。具体的には、以下。

 

■仕事に活かせること

・目標とスプリントクエスチョンを決めて、ソリューションを考えること

・一番大事な「誰が」「何をした瞬間か」を絞り込んでソリューションを作ること。

・新しいアイデアは、別分野の素晴らしいソリューションの「組み替え」と「改良」から生まれること。
・何を考えるか?を決めて、なるべく集中できる単位で考えること。(資料作りなら、「誰に何をしてほしいのか」「資料のストーリー」「それぞれのページで言いたいこと」「どんな図や表を持ってくるか」「配色や位置はどうするか」など)

・何かを決めるときは、議論するのではなく投票で有無を言わさず決めてしまう。(成果物をターゲットが使うときに、こちらから補足はできない。ならば、成果物だけを見て判断した方が、早いし合理的)

・たくさんのデータから洞察を得るより、実際に使用する可能性があるテスター5人に使わせてみた方がリアルな反応が得られるし、スピーディ。